ゆううつ

本当に伝えたいことはいつだって届かない。もう少し正確に言うとほとんど届かない。 傷つけないように遠回しに伝えた結果まるで違う話になってしまったり、 もういいやと真っ直ぐ放った言葉は受け入れてもらえなかったり。 愛の言葉を紡げば紡ぐほど愛がなくなるだとか。 そんなことはあるはずがないのに、どんどん届かなくなっていく。 どうにもならない気持ちをどうにかして伝えるには 膨大な量の言葉が必要だ。 だからこそ考えて考えて、頭を捻って絞り出した言葉を 何度も何度も噛みしめるようにこぼしてみても あーわかったわかっただとか、しつこいだとか。 あァなんて憂鬱なんだろう、なんて、なんでこんなに、さみしいのだろう。 ふと頭によぎった銀色、ふわふわの髪の毛、風になびく着物、木刀。 耳にこびりついた気怠げな低い声、鼻を掠めたほんのり甘い、あたたかい匂い。 あぁ、憂鬱。