せんねん
綺麗なことばかり繰り返して、優しい言葉だけ吐いて、生きて死んでいくなら心などいらないのかもしれない。
頭脳など必要ないのかもしれない。争わぬなら勝つためのものなどいらないのだから。
それが好いのか悪いのか、そうなるべきか否か、はたまたあり得ないと切り捨てられるものなのか。
何度も似たような喧嘩をして後悔して謝って。
そのくだらないやりとりや無駄な時間に感じられるものが必要だからあるのか、切り捨てられなかっただけか。
いちいち感情を惑わせるのが馬鹿なのか、それが生きていくということなのか。
何度めかわからない、ばか、と言葉が落ちたときにはなんとなく、ぼんやり、それらすべてがどうでもいい気がしていた。
自分に向けたような、相手に向けたような。滅多に見せない涙でもこぼせばすぐにでも彼は謝る気がした。
だが悲しいことにそんなことのための涙は一滴も出なかった。
無駄は許さない身体なのだろうか。だから、こんなに苦しいのか。
明日にでも地球が爆発してしまえばいいのに。みんな巻き込んでしまえば、少しは気が楽になる。
どうせ地球上にあと数人おなじことを思うやつはいるに違いないんだから、だから、ねえ、お願い。
そう思う心と裏腹にだらりと横からさがったままの手が祈りのために組まれることはない。
あぁくだらない。無駄だ。ばか、だなぁ。
「なァ、」
お前の好きなアイス、買ってきたんだけど。
小さな声でぼそぼそと聞こえた。
顔だけ振り向くとばつが悪そうに頭を掻きながら俯きがちにこちらの様子を伺っている。
ばぁか。最後にそう言って、すべての思考を窓の外へ置いて、大好きなアイスの元へ飛び込んだ。
ぐぇ、と蛙を踏み潰したような声が聞こえて少し笑えた。ふ、そうだね。地球がもう少し永らえるのを許そうか。