ことり

あぁほら見て、 言い出せずに喉元でぐしゃぐしゃと言葉が詰まった。 じっと枝先を見つめる。小鳥が突ついていた。 隣にいないことに数歩先で気づいたのか、立ち止まると、頭だけをぐるりと向けてきた。 その顔にはありありと感情が刻まれている。面倒臭そう。 懸命に芽をつつく小鳥の姿と対照的にひどく気だるげな立ち姿。 ひらひらと着物が風にゆられている。 ぼうっと立ち尽くしていると、急に強い風が吹いた。 ちゅん、とひと鳴きして逃げるように小鳥が飛んで行ってしまった。 思わずため息を吐きそうになった、それをなんとか堪えて。 堪えた分おもいっきり、履いていた下駄を蹴飛ばす。 狙いの人物の、ちょうど足元に当たって落ちた。あっかんべー。 さっきよりずっとずっと面倒そうな表情を浮かべてそれを拾う。 ぷらぷら指に引っ掛けたと思えば、歩きはじめた。 ついこぼれた戸惑いと焦りの混じった声、舌なんて出してる場合じゃないと焦ったことに 後ろを向いてるくせに気づいたのか。 くつくつと、軽い笑い声が聞こえた。 それは小鳥の鳴き声より、ずっと、ずっと。