だらく
暑い。あついあついあつい。
ぶつぶつと言葉をこぼしていると殴られた。うるさいとはひどい。
暑いのは事実だし避けようのない現実だし、とかなんとか文句を言うとまた殴られた。理不尽だ。
これはもしかしたら死ぬかもしれないよ、
そう言うと呆れたように、実際呆れたのだろうが、思い切りため息を吐かれた。
挙句、ばかじゃねェのお前、なんて。
すぐそばのひとが死に直面しているというのになんて冷たい男なんだろうか、信じられない。
もう実家に帰らせていただきます、とソファに寝転んでうちわを仰ぎながら呟いた。
バーカ、言葉を返すのが面倒になったとしか思えない反応。
あ、アイス食べたいなぁ。思ってるだけで伝わらないかなァ、あわよくば買ってきてくれないかなァ、無理だろうなァ。
うちわを持つ手が疲れてきた、やっぱり時代は扇風機なんだよ。
バカお前、今はクーラーなんだよ。向かいのソファに諦めたように、同じように倒れた男がいう。
じゃあ買ってよ、無理だろ、なんで、逆になんで買えると思うんだよ。
…あぁもうだめだ暑すぎる。
死んだらどうしてもらおうか、海にでも流してもらいたい。
あぁでも死んでから苦しむのは嫌だ、カナヅチなんだった。
燃やされるのはもっと暑そうだから嫌だ、うーん、そうだなあ。
うんうん目をつむって唸っているとぱたぱた風が送られてきた。
仰ぐのをすっかりやめて暑さにやられていた体が涼しくなる。
ぱちり、まぶたをあげる。うちわで仰ぎながらだるそうに一言、アイス食おうぜ、さっき買ってきたやつ。